PRIの基本コンセプト
BASIC CONCEPTS OF THE POSTURAL RESTORATION INSTITUTE®
BY RON HRUSKA, MPA, PT
人体は左右対称ではない。神経系、呼吸器系、循環器系、運動器系、そして視覚器等、身体の左側と右側は同じではない。これら器官は様々な場所に位置し、個々に責任、機能、そして需要がある。この左右非対称のシステムデザインは素晴らしいものであり、人体はこれらシステムの不均衡をインテグレーション(統合)することによってバランスが保たれている 。例えば体幹では肝臓が右側に、心臓が左側に位置する事によってバランスが取られている。そして四肢の優越は相反性機能によって保たれている。(例:歩行時の右腕と左脚の協調運動)
Postural Restoration Institute® (以下 PRI)の認定プロバイダーは、身体の特定箇所の不使用、または過剰使用から発展した弱さに起因する身体のインバランスと典型的パターンを認識する事が出来る。この身体の片側過剰使用は、他器官の片側過剰使用によって誘発される事もある。例えば、構造上右側に比べサイズの小さい左側の横隔膜が呼吸時にその役割を果たせない場合、身体が捻れる場合がある。 右の横隔膜は左側に比べ大きく、更には肝臓による構造的支持から呼吸筋として常に望ましい位置を保つ事ができる。この為、左の腹筋群及び腹壁を歩行などの相反性運動の際に使う事は体幹のバランスを保つ事において常に重要なことと言える。
右胸郭内部には心臓が無いため、呼吸の際に右胸郭を開いて維持する事は困難である。右下肢を中心に立つことによって左体幹上部の重量を相殺する事は、左骨盤の前方移動、そして右肩が下がる事を助長する。この非対称は脳の両半球の特別な機能を補完する。脳の各半球は共通する機能を有する一方で、それぞれ”得意”とする機能を持つ。右脳は体の左側を制御し、左脳は右側を制御する。左脳はコミュニケーションや言語に関する責任を多く持つため、右上肢はコミュニケーション、そして成長と発展の支配的な四肢となる。この正常なパターンのバランスが左上肢や下肢の神経や筋肉の活動によって保たれていない場合、PRIのトレーニングを受けたセラピストはそのパターンのインバランスを認識する事ができる。
これらの正常な不均衡が歩行、呼吸、または旋回運動中に相反性運動で制御されない時、強いパターンが生じ、構造的弱点、不安定性、そして筋骨格疼痛症候群を引き起こす。PRIのアプローチ方法を通して仙骨(骨盤)、胸骨(胸郭)、そして蝶形骨(頭蓋)の周りの筋活動のバランスを整える事によって、身体の様々な器官を統合された非対称の機能に最適な位置に置く事ができる。すべてのPRIの認定プロバイダーは、相反性機能をリハビリテーションに正しく取り入れる事により、左骨盤や右腕の“先導”を抑制し、呼吸器による右肺での換気能力、すなわち空気の流れを最大限まで高めることができる。
視覚、職業特有の動作、子宮内の位置などはすべて左右非対称の傾向とパターンに影響する。ザトウクジラは体の右側でボトムフィード(海底での補食)し、キツネザルは左上肢で食物をつかみ、ヒキガエルは右の前足を左より多く使い、チンパンジーは左手で枝にぶら下がり右手で果物をつかむ。そして人間は機能的容易さと姿勢保持のため、体重を右側で支える。PRIの認定プロバイダーは人間のスタンス、四肢の動きと機能、呼吸機能、前庭器の不均衡、下顎の定位、足の動力学などの一般的な統合パターンを認識し、これらパターンを正しい呼吸と身体の左右の機能の抑制または促通をインテグレーションしたエクササイズ・プログラムを処方することによってバランスを整える。